乾癬 生物学的製剤(バイオ製剤)について

当院では尋常性乾癬に対する生物学的製剤(バイオ製剤)の導入を行うことが可能です。
当院は日本皮膚科学会より乾癬生物学的製剤使用施設の承認を得ております。

生物学的製剤はバイオ製剤とも言われ、乾癬の病態に大きく関与するサイトカインと呼ばれるタンパク質自体やサイトカインが結合する受容体という部分をブロックする抗体製剤です。
乾癬に対しては、2024年現在までに11種類の生物学的製剤が発売されております。
いずれも、乾癬の病態に大きく関わるサイトカインTNF(tumor necrosis factor)-α、IL(interleukin)-23、IL-17のいずれかをブロックするものです。
高額な治療ではありますが非常に有効性の高い治療ですので、尋常性乾癬の皮膚症状に長年悩まされている方はぜひご相談ください。

このような場合に導入を検討します

・中等症〜重症の乾癬
・皮疹が広範囲にあるため毎日外用に時間をとられてしまう
・長年の外用治療で皮膚が薄くなってしまっている
・内服治療で効果が不十分
・内服治療の副作用が耐えがたく治療を継続できない
・難治部位(頭皮、爪など)を治療したい

生物学的製剤適応の判断

生物学的製剤の適応は「the rule of 10s」に基づいて判断いたします。

・BSA(Body Surface Area:乾癬が生じている面積)が10%以上
・PASI(Psoriasis Area and Severity Index:重症度スコア)が10以上
・DLQI(Dermatology Life Quality Index:生活の質スコア)が10以上

上記いずれかを満たす皮膚症状がある場合に生物学的製剤の導入が可能です。

*導入については、病歴と治療経過をお聞きし皮膚症状を診察した上で判断致します。
*上記の適応を満たしている場合、乾癬生物学的製剤適正使用のガイドラインにしたがって導入前の検査を行います。
*検査結果に問題がなければ投与を開始します。

乾癬生物学製剤の合併症

免疫に関わるタンパク質を抑制しますので感染症の発症リスクが増加する場合があります。
特に、TNF-αは感染症に対して重要なサイトカインであるため、TNF-αをブロックした場合に感染症のリスクが高まりやすいです。
IL-17はカンジダに対して重要なサイトカインであるため、IL-17をブロックすることで皮膚や粘膜のカンジダ症を発症する場合があります。
IL-23については感染症への影響が少ないとされています。

その他の合併症
*過敏症反応、注射部位の赤み・痛み
*ふらつき感、息苦しさ、心拍数の上昇、めまい、嘔気、嘔吐、皮膚のかゆみや赤み、関節痛、発熱 など

感染症に注意すれば比較的合併症の少ないお薬ですので、定期的に検査を行い合併症に注意しながら治療をおこないます。

生物学的製剤導入の流れ

*初診時
・問診ならびに乾癬の診断を行い、皮膚症状から重症度を確認します。
・適応は the rule of 10s に従って判断致します。
・皮膚症状から治療適用がある場合、事前検査(血液検査、画像検査)を行います。
*血液検査は当院にておこないます
*画像検査(胸部レントゲン)は、近隣連携病院である淡海医療センターに依頼します。
*検査結果が出るまでに1〜2週間ほどかかります。

*2回目受診時
・検査結果をお伝え致します。
・検査結果に問題がなければ、治療薬を決定し導入日を予約致します。

*3回目の受診(導入開始)
・自己注射の場合、予約診療時間帯(14-16時)で自己注射指導を行います。
・院内注射の場合、通常の午前診療(9時30分-12時)もしくは午後診(16時〜18時)で注射を行います。

費用のご負担

保険診療ではありますが、高額な治療になりますので予めご了承ください。
高額療養費制度が適用となる方はご活用ください。
・子ども医療費助成制度も適用となります。
・公務員の方や特定の企業の方は、福利厚生として付加給付金制度をご利用いただける場合があります。お勤め先にてご確認ください

高額療養費制度をご活用ください。
保険診療は、年収に応じて一月あたりの医療費の上限が決まっています。
*注射薬は3ヶ月分処方致しますので、3ヶ月に1度の月上限金額のお支払いが必要となります。
年収が多い方は高額療養費制度の上限を超えず、適応にならないことがあります。ご了承ください。

” 高額療養費制度ついての説明はこちら “

*高額療養費制度は世帯合算も可能です。
同じ医療保険に加入している場合、同一世帯の家族が同じ月に支払った自己負担限度額を合算して申請できる制度です。

” 高額療養費シミュレーション(サノフィサイト)”

【付加給付金制度について】
*公務員の方や特定の企業の方は、福利厚生として付加給付金制度をご利用いただける場合があります。
付加給付金制度をご利用いただける方は、より少ない医療費負担でお薬を使用できます。
付加給付金制度がご利用可能かについてはお勤め先にてご確認ください。

【子ども医療費助成制度について】
子ども医療費助成制度をご利用いただけます。
お住まいの市によって適用となる年齢が異なりますのでご注意ください。

投与量と投与スケジュール

製剤によって導入時のスケジュール、投与量、投与間隔、自己注射が異なります。
通院での投与(院内注射)、もしくは自己注射(ご自宅)での治療が可能です。

薬剤費の目安

*R6年4月時点の薬価になります。


その他の注意点

・皮膚症状が十分に改善するまでの間は、お薬の外用を継続して下さい。

・スキンケアを継続し、香辛料、お酒の取り過ぎには注意してください。

・睡眠時間を十分に確保してください。体を休め、ストレスを溜め込まないようにしましょう。

・乾癬は全身炎症を生じる疾患と言われています。皮膚症状が悪化すると血管などにも炎症が生じてしまい、動脈硬化が進むことで脳梗塞や心筋梗塞などの血管性疾患のリスクが高まります。

・肥満の方は体重を落としましょう。