多汗症とは
多汗症には全身に汗が増加する全身性多汗症と体の一部に汗が増える局所多汗症があります。
全身性多汗症には原因のわからない原発性のものと、感染症、内分泌代謝異常、神経疾患に合併した二次性のものがあります。
局所多汗症も原因のわからない原発性のものと、外傷や腫瘍などの神経障害による二次性の局所性多汗症があります。
原発性局所多汗症では手のひら、足のうらや脇という限局した部位に過剰な発汗を認める疾患です。
幼少児期ないし思春期ころに発症し、手のひら、足のうらは精神的緊張により多量の発汗がみられます。
症状の重い例では時にしたたり落ちる程の発汗がみられ、手、足は絶えず湿って指先が冷たく、紫色調を帯びていることがあります。
この様な湿った手足はあせもができて表皮がめくれたり、カビや細菌の感染を起こしやすいです。
腋窩多汗症は精神的緊張や温熱刺激によって左右対称性に脇の下に多汗がみられ、下着やシャツにしみができる程です。手足の多汗を伴っていることもあります。
治療
・保険外用剤
当院で処方可能です。
【原発性腋窩多汗症の方】
・エクロックゲル®(ソフピロニウム臭化物ゲル)
・ラピフォートワイプ®(グリコピロニウムトシル酸塩水和物)
原発性腋窩多汗症(わき汗)に適用のあるお薬です。
多汗症の原因となる汗はエクリン汗腺から分泌されます。
エクリン汗腺は交感神経により調節されており、アセチルコリンがエクリン汗腺のムスカリン受容体サブタイプ3(M3)を刺激することにより発汗を誘発すると考えられています2)。
エクロックゲルやラポフォートワイプは、M3を介したコリン作動性反応を阻害し、発汗を抑制します。
【原発性手掌多汗症の方】
・アポハイドローション®(オキシブチニン塩酸塩)
手掌多汗症(手汗)に適用のある治療役です。
アセチルコリンが結合するムスカリンM3受容体をブロックすることで発汗を抑制します。
いずれの外用薬も、以下のような症状があらわれた場合、使用をやめて、すぐに診察を受けてください。
- 皮膚炎や紅斑、かゆみ、湿疹、刺激感
- 口の渇き
- 尿が出にくい、尿が近い
- 光をまぶしく感じる など
そのほか、気になる症状があらわれたときはご相談ください。
・イオントフォレーシス
手のひら、足の裏には有効な治療法です。
微弱な電流を手足に流すことによって発汗抑制作用が得られます。
申し訳ありませんが当院ではイオントフォレーシスを扱っておりません。
イオントフォレーシス機器は市販のものを購入することも可能です。
【その他の治療法】
・ボトックス注射
腋窩、手のひら、足の裏などにA型ボツリヌス毒素(ボトックス)を局所注射する治療法です。
ボツリヌス毒素局注療法は、腋窩に対して欧米では非常に推奨度の高い治療ですが、本邦においては現時点で保険適応外であります。手のひらや足の裏に対しては欧米でも保険適応にはなっておりません。
*当院ではボツリヌス毒素の局所注射を行っておりません。
その他、手のひらの多汗症のみ内視鏡的胸部神経遮断術(ETS)という手術による治療があります。
ETSは手のひらの多汗症に対して他の治療法で効果がない場合適応となりますが、この手術を行っている施設が少ないことや、この治療をすることによって手のひら以外からの多汗(代償性発汗)をはじめとした合併症を生じることも多く、当院ではお勧めしておりません。
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