アトピー性皮膚炎

あとぴーせいひふえん
アトピー性皮膚炎の臨床写真

アトピー性皮膚炎について

生後2〜3か月頃から顔に始まり、徐々に肘・ひざの内側、体に治りにくいかゆみの強い湿疹が長期間続きます。

日本人では約100人中2〜3人がアトピー性皮膚炎をお持ちです。

遺伝的な体質(皮膚バリア機能の低下、湿疹を生じるアレルギー体質)と環境要因(肌の乾燥を促進するもの、掻く行為、アレルゲンへの曝露、気温、湿度など)が合わさることで発症します。

皮膚バリア機能の低下にはフィラグリン遺伝子の異常が関係しています。
アトピー性皮膚炎と診断されている日本人の10-30%がこの変異をもっていると報告されています。
フィラグリンは皮膚の一番外側の角質細胞がつくるタンパク質で、皮膚のバリア機能や潤いを保つために重要なタンパク質です。
このフィラグリンの遺伝子に変異があると、フィラグリンが減り皮膚のバリア機能が弱くなってしまいます。

健康な肌のイメージ図
アトピー肌のイメージ図


アトピー性皮膚炎をお持ちの方は、アレルギー体質皮膚バリア機能異常のため皮膚に炎症を生じやすく炎症によってかゆみの神経が過敏になります。

神経が過敏となったせいで、健常な皮膚においてはかゆみと感じないような優しい刺激かゆみとして感じてしまい、掻きむしってしまいます。

炎症によってかゆみが強くなり、さらに引っ掻くという悪循環を生じ、これをitch – scratch (itch:かゆみ、scratch:掻く)サイクルと言います。

子供の頃にしっかりと皮膚科専門医の適切な治療を受けることで、重症化を防ぎ、子供のうちに寛解させることも可能な病気です。

アトピー性皮膚炎の診断

1)慢性的なかゆみ
2)特徴的な左右対称性の湿疹病変(乳児なら顔、小児なら関節、成人なら上半身など)
3)繰り返す経過(1歳未満の乳児なら2ヶ月以上、1歳以上では6ヶ月以上)


アトピー性皮膚炎の治療

当院では、日本皮膚科学会アトピー性皮膚炎治療ガイドラインに沿った治療を行っております。ステロイドを全く使わない治療、いわゆる脱ステロイド療法は行っておりません。
治療の基本は外用ステロイド剤の正しい使い方を学ぶことです。

皮膚が安定した状態になればステロイド以外の薬を使用し、段階的にステロイドの外用を減らしていく方針です。


アトピー性皮膚炎はかゆみや湿疹を起こしている皮膚の炎症を抑える事が重要です。
まずは、炎症を抑制するステロイド剤の外用や内服とバリア機能を補うための保湿基本となります。

外用剤を塗る量も非常に大切です。
外用する量が適切でないと、薬の効果が十分に発揮されません。

適した外用量の目安としてフィンガーチップユニットという考え方があります。
手のひら薬2枚分の面積に塗る際に適した外用量になります。
チューブに入った塗り薬(軟膏やクリーム)なら、人差し指の第一関節の長さ。
ローションタイプの塗り薬なら、1円玉の大きさくらいの量です。
ティッシュがくっついて落ちない程度のべたつきがあることが目安となります。

外用量の目安。finger tip unitの図。
フィンガーチップユニットについて



治療薬にはステロイド以外のお薬もあります。
長期的な副作用はステロイドよりも少ないのですが、重症の方に対しては効き目が弱いお薬です。

皮膚症状に合わせて使い分け段階的にステロイドから他のお薬へ移行する必要があります。

ステロイドの塗り薬は、悪化したときだけに塗るのでは皮膚の炎症を落ち着かせることが難しく、皮疹の増悪を繰りかえしてしまいます。

まずは、かゆみや湿疹が出にくい状態になるまできちんと強めのステロイド剤の外用を続ける必要があります。

皮膚症状が落ち着いた後に少しずつお薬を塗る回数を減らしたり、塗る間隔を空けていきます。
皮膚の調子が良い時期にもステロイドの外用を継続することが大切で、これはプロアクティブ療法と呼ばれています。

皮膚の状態が安定したら、ステロイド以外のお薬に置き換えていくなど、皮膚症状に合わせて段階的に適した治療法を選択する必要があります。

最終的には予防的に週2、3度ステロイドを塗り続ける、もしくはステロイド以外の長期的な副作用の少ないお薬の外用を続けることで、かゆみや皮膚の炎症を上手にコントロールしていくことを目標にします。

引っ掻くという行為は皮膚に強い炎症を起こすためアトピーが悪くなります。
この悪循環を改善するために、補助的にかゆみ止め(抗アレルギー剤)を飲むこともあります。

正しいスキンケアを心掛け、処方されたお薬をしっかり塗ることが重要です。
定期的に通院して良好な皮膚状態を保ちましょう。


ステロイド以外のお薬について

ステロイド剤以外のお薬として以下のものがあります。
・免疫抑制剤
-塗り薬(タクロリムス軟膏)、飲み薬(シクロスポリン
・JAK阻害薬(外用:デルゴシチニブ、内服)
・PDE4阻害薬(外用:ジファミラスト)
デュピルマブ(皮下注射)

デュピクセント


当院ではデュピルマブ(皮下注射)・シクロスポリン(内服)による治療は中等症から重症アトピー性皮膚炎の方のみに限定して使用しております。

デュピルマブは適応を慎重に判断し、中等症以上〜重症の方に限定して使用致します。
・保険診療ではありますが、高額な治療になりますのでご了承ください。
疾患の重症度にもよりますが、高額な治療法であるデュピルマブを初診時から開始することはお勧めしておりません。

まずは、基本治療をしっかりと行い、それでも皮膚症状の悪い状態が続く場合は導入を検討致します。


その他の注意点

生活習慣

  • 睡眠不足、ストレスはアトピー性皮膚炎を悪化させます。
    健康的な生活習慣を心がけましょう。
  • お酒や刺激物の摂取は体温を上昇させ、かゆみが悪化する原因となります。
    過度の摂取は控えてください。

スキンケアについて

  • 爪を短く切りましょう。
    引っ掻く刺激は、思いのほか強い皮膚炎症を起こす原因となります。
  • お風呂はぬるめの温度にしましょう。38〜39度程の温度が理想的です。
    熱すぎると皮膚の潤い保つために必要な皮脂が過剰に落ち肌のかさつきバリア機能低下の原因となります。
  • 入浴時は、低刺激の石けんをしっかり泡立て手でやさしく洗いましょう。
    ナイロンタオルの使用は避けてください。
    擦れる刺激で皮膚炎が悪化します。
  • アトピー性皮膚炎の方は皮膚が過敏になっています。
    髪を束ねて皮膚に接触する刺激を減らしましょう。
    衣類は皮膚が擦れにくいものを着てください。
    洗顔後や入浴後に水滴を拭きとるタオルは、肌を擦りにくいやさしい生地のものを使用してください。
  • 汗をかいたら放置せずに、柔らかいタオルでやさしく拭き取るか、シャワーで洗い流しましょう。その後スキンケアを行うことが大切です。

環境要因

  • ダニやホコリに対してアレルギー反応を起こしてしまう方もおられます。
    こまめな部屋の換気、掃除を心がけ、空気清浄器の導入などを検討してください。
  • 乾燥肌の体質がありますので、部屋の湿度を50〜60%程度に保ちましょう。